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POOOPOPOO#5
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Year: 2022
Medium: mixed media
Dimensions: 80 x 120 x 2.5 cm (31 1/2 x 47 1/4 x 1 in.)
Acquired from Yumiko Chiba Associates, 2023
イメージを三次元的に印刷する技術を利用して作られている。まるで絵具を筆で塗りつけたような確かな物質感を伴いながらも、テクスチャの異なる薄い層を構造的に積み重ねて作られたかのような画面はやはり絵画というより彫刻的である。金氏は元来扱うメディウム(素材)が多様であるが、本作ではコラージュのように見えるプリントであり、油彩のように加工されたインクの隆起、というようにメディウムとして二重三重の置換を経て作られている。PとOの二進数暗号のようなシリーズタイトルは、本作を構成するPainting、Object、Oil、Photo、Print、など、これまで金氏が使ってきた素材や状態を意味するという。それを踏まえて、再度本作の構成を見ていくと、立体的なプリント技術による高い再現性という点を考慮しても、目を引くのは表層に表れるスプレーペイントのオレンジや銀、青のベッタリとした飛沫、そして、下地に当たる部分には極端に拡大された紫色のノイズがシミのように広がっているのが見える。その両者の中間層には蛍光色の色面や絵具の筆致が重なり合い、そして、散水ホースやチューブのようなモチーフが突如として具体的な空間性と共に現れてくる。それぞれの層には解像度の差異があり、質感の差異があり、それが故に反発して完全には混ざり合わない不安定なレイヤーを作り出している。この曖昧で複雑で不安定な領域は金氏作品に共通する点である。その領域に液体がじわじわと染み入って侵蝕していくかのように、ファンタジーとフィクションを滲ませていくのである。この作法は、彫刻でも平面作品でも終始一貫している。