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On slow Obliteration, or How are you still hungry
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Year: 2019
Medium: flip-dot panel, powder-coated aluminium tray frame, rub-down transfer
Dimensions: 130 × 86.1 × 7.8 cm (51 1/8 x 33 7/8 x 3 in.)
Acquired from TARO NASU, 2022
本作は、「On slow Obliteration, or」と始まるタイトルがつけられた一連のシリーズの一作で、オセロのように両面が異なる色になっている1cm程度の丸いドットがあるアルゴリズムに沿って回転することで、雨粒や雫が落ちていくようなアニメーションを作り出す装置である。本作のフリップ・ドットの両面はシルバーと明るめのグレーになっている。シルバーの面がその時々の光の影響によって白く光ったり黒く沈んだりすることで、中間色のグレーよりも明るいか暗いかで流れていく雨のような描写の見え方は変わってくる。
また、このシリーズでは作品の装置にテキストが添えられることになっているが、本作では美術史上の著名な作家名が羅列されている。ポン・タヴァン派のCuno Amietに始まり、ドイツの夭折のアーティストUll Hornの名前で終わるこの並びには、法則性や意味性はほとんど読み取ることができない。本作のフリップ・ドットが明滅する動きを「雨が降る」や「水滴が落ちる」といった何らかの時間的現象として認識するためには、ある程度の時間作品の前に立っている必要がある。その間、著名美術館の所蔵作品リストのようなテキストに時折目を送りながら、そのうち何か劇的なアクションが起こるのだろうかと淡い期待を胸にしつつ漫然とした時間を浪費するのである。時間とは多くの人にとっては資産であり、その観点から対比的に考えればテキスト上に並ぶ名前は美術史という時間軸上において認められてきた価値の表象そのものである。