Year: 1999
Medium: blue neon
Dimensions: 176 x 213 cm (69 1/4 x 83 7/8 in.)
Acquired from Phillips, 2022
しばしばエミンの作品には「Confession」であるとの評が付けられる。初期から一貫して激しい自己の表出、それそのものを美術表現としてきた作家であるが故である。本作は、そういう観点においてはエミンの作品としてはかなりソフトな部類になるかもしれない。優しいブルーネオンの光で浮かび上がるのは、かわいらしい一頭の子鹿と、その上に掲げられた「It’s what I’d like to be(これぞ私のなりたい姿)」という一文である。光のサインを美術表現に持ち込んだ最も早い作家たち、つまりダン・フレイヴィンやジョセフ・コスースらが工業的造形美やミニマルな機能性を援用していたことに反して、ネオン・アートのイメージを極めて感情的な表現に塗り替えたのはエミンである。エミン自らのセリフだとしてテキストを再読してみるとまた違ったニュアンスを想像せずにはおれない。子鹿は可愛らしいものの表象であるだろう。しかし、テキストは自らにその属性がないことを示している。1999年といえば当時エミンは36歳、同年のターナー賞授賞式では泥酔して騒動になったほどまだまだ破天荒な作家として鳴らしていた頃である。本心では純真な子鹿のようになりたいと願っていたのだろうか?