Waves of Light
Year: 2018
Medium: four-channel digital work, continuous Loop
Dimensions: 121.4 x 274 cm (47 3/4 x 107 7/8 in.) overall
Acquired from Pace Gallery, 2022
「超主観空間」とteamLabが規定している西洋絵画のパースペクティブとは異なる平面的描画法に則って作られている。視点を一所に固定して見ることを大前提とした遠近法による構図では、絵画の奥に存在する消失点に向かって空間が収斂していく。それは翻せば、実際の空間の広がりを無視し、むしろ狭小な空間へと収束していくことで錯視的に空間の奥行きを仮構しているに過ぎない。teamLabの作品においては東洋美術の多くに見られる西洋的透視図法とは異なる空間性を引き継いでいるのである。西洋絵画は奥に進むあるいは眼前に迫る方向性を持つが、東洋美術、特に日本の絵巻などにおいてはスクロールする水平移動の視点を前提とした空間と時間が表されているのである。例えば、絵巻などに見られる「吹抜屋台」と呼ばれるような空間表現は、理論的には斜投影あるいは軸測投影などと説明されることが多いが、奥行き方向の歪みがないため視点をどこに移動させても常に正面性を維持することができる。本作品において荒波が隆起しては強く引き戻していくダイナミックな空間的表現に圧倒されるが、波は奥から手前に向かうことはなく常時水平方向に展開しており、それはまさに絵巻の水平移動する視点を踏襲しているだろう。それが故に鑑賞者はこの大画面の前に立って、自らの視点を左右に自由移動させつつ常にその波のムーブメントを自らの真正面に感じることができる。言うなれば現実と同じスケールの空間がディスプレイの奥に仮想的に広がっており、それを窓から見渡しているのと同じ体験を再現している。また、本作の波の描写が線的な集合、つまり極めて東洋的「目」に従った表現で描き出されていることも注視に値する。西洋における水の表現はクールベの迫り来る荒波の絵を見れば分かるように質感と量感を動的な視点から捉えるのが主流であるのに対し、東洋においては北斎の例に明らかなように、雨にしても川にしても、そして波にしても高速度撮影写真のように形質と線の静的視点によって描写することが多い。teamLabは絵画的な空間と時間の描出を先鋭的テクノロジーを駆使しつつ再解釈するのである。
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