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生成と解体 / Generating and Destroying
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Year: 1995
Medium: acrylic on canvas
Dimensions: 193 x 259 cm (76 x 102 in.)
Acquired from Hino Gallery, 2022
キャンバス全面にピンクを基調として描かれたシリーズの代表的な一作。F200号サイズの大きな画面に対峙すると、その茫漠とした絵画の世界に身体ごと飲み込まれるような感覚さえ覚える。ピンクという色は、それそのものを絵画の主題として扱う抽象表現の画家は少ない。カラーフィールドの作家隆盛の60年代にNYへの遊学を経験した松本にとって、彼らのオールオーヴァーな画面構成やアクリル絵具とロウキャンバスの扱い方は、以後の制作活動に大きな影響を残したと言える。日本では未成熟であった抽象表現にいち早く挑み、当時まだ新しい画材であったアクリル絵具ならではの発色の良いピンク色を自らのシグニチャーとして確立していったように、その抜きん出た先取性は作品の芸術性と共に今後より高く評価されるべき点である。本作はそのピンク色が画面全体にとみに美しく広がり、その色彩から抽象されるであろう「生成と解体」のイメージは、松本の中で消化されたカラーフィールドを体現していると言って良い。2005年に神奈川県立近代美術館鎌倉における「今日の作家」展、2009年の国立新美術館の二つの個展形式として開催された「光 松本陽子 / 野口里佳」展のいずれにおいても主要な松本作品の一つとして紹介されており、本作の重要性が窺える。2022年の埼玉県立近代美術館「桃源郷通行許可証」では当コレクションからの貸出展示となった。