YOKO MATSUMOTO
松本陽子
1936年東京都生まれ。1960年東京藝術大学美術学部油画科卒業。在学時より非常に高い評価を受け、卒業と同時に渡米。当時NYを席巻していた抽象表現主義、カラーフィールドの作家たちをリアルタイムで目にし、彼らの思想や制作スタイルに共感を抱いたことが現在まで続く松本の抽象表現の原点となっている。キャンバスに描く絵画といえば画材は油彩であることが一般的であった当時において、アクリル絵具を用いて描く先駆性もあった。松本の精神性を具現化する「ピンク」のシリーズは松本のキャリアにおいて最も重要視されるが、その後「黒」、「グレー」、「水彩」、「緑」などいくつかの変遷を経て2020年代の現在まで精力的な制作を続けている。特に「緑」のシリーズは、「ピンク」においては色彩が無形の表現として鑑賞者の視線を1箇所にとどめることなく正しくオールオヴァーであったのに対して、強い線描の要素や緑の奥に潜む鮮やかなオレンジやブルー、白などがある流動性や構図的な動線を作り出している。50年にわたる現在進行形の画業を通して、真に抽象表現の先端を追求し続けており、抽象絵画の国際的な歴史に重要な足跡を刻みうる作家である。東京国立近代美術館、国立国際美術館、東京都現代美術館、神奈川県立近代美術館、愛知県美術館、高松市美術館、ふくやま美術館(広島)ほかに収蔵実績多数、国立国際美術館での個展(1991年)、国立新美術館(野口里佳との同時個展形式、2009年)など。