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Line - Fragment #56
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Year: 2008
Medium: acrylic, paper, framed
Dimensions: 31.6 x 31.6 cm (12 1/2 x 12 1/2 in.)
Acquired from SBI ART AUCTION, 2022
名和の平面作品として現時点で最も知名度が高いと思われる「Direction」シリーズ。またその関連作品として位置付けられる「Moment」シリーズがあるが、先行するものとして本作の「Line - Fragment」の展開がある。名和の平面作品の特徴は「描く」という行為の能動的な放棄にあるだろう。画家であれば、絵筆を握り、自らの身体性に応じてそれを振るいながらキャンバスに向かいはじめるだろう。しかし、彫刻家である名和は、その一歩目の時点から画家たちとは異なっている。本作に始まる名和の一連の絵画的作品では、重力で落下する絵具をキャンバスで受け止めることが「着彩」にあたり、絵具ではなくキャンバスを前後左右に動かすことが「描画」にあたるのである。これはメディアが絵具とキャンバスに置き換わっているだけで、彫像や塑像と同じ彫刻的行為なのである。あくまでオブジェクトに意識を向け続けていることが名和を彫刻家たらしめ、さらに、彫刻の規範を常に覆し続けることこそが現代彫刻作家の急先鋒であることの証左である。名和の初期にあたる本作からもその一貫した姿勢が見てとれる。