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Boris
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Year: 2002
Medium: mixed media
Dimensions: dimensions variable
Acquired from Pace Gallery, 2025
「Magnatron Series」と呼ばれる作品群の一点。ブラウン管テレビのディスプレイの形状にくり抜かれた壁面の開口部から光が見える。このシリーズは、窓越しにゆらめくテレビの光を見たタレル自身の幼い記憶から着想されたという。シリーズの各作品には過去にアメリカで放映されていた特定のTV番組に由来したタイトルが付けられている。壁には実際にテレビの筐体が埋め込まれているが真っ白な室内では奥行きなどの空間的な手がかりが失われ、それはまるで宙空に浮かぶ光体のようにも見える。光の明るさは不安定にゆらめき、色彩も移ろう。このインスタレーションでは、鑑賞者は室内に用意された椅子にゆったりと腰を掛け、まるで自宅のリビングでテレビを眺めてくつろぐようにして光の明滅に対峙するように促される。しばし瞑想にも似た時間を過ごすことになるだろう。あるいはタレルの着想がそうであったように、夜の窓から漏れる光の気配を夢うつつのまま眺める子どものような気持ちを思い出すかもしれない。