Sowing confusion amongst the titles, or The squatters (Tiger meet Hiller’s Lucidity & Intuition: Homage to Gertrude Stein (2011))
Year: 2020
「The Squatters」(不法占拠者たち)と作家が呼んでいる8匹の猫たち。彼らは一体どこから入り込んでくるのか、美術作品を飾るために用意されたはずの白い台座の上に我が物顔で横たわり、安らかな寝息を立てている。本作はそのうちの一つで、この虎柄の猫は副題から推察するとTigerと名付けられているようだ。ガンダーはこの「The Squatters」にアニマトロニクス技術を利用してまるで本当に生きて呼吸しているかのように見せ掛けている。本作で猫が寝ている円形の台座は、本来はSusan Hiller(スーザン・ヒラー)による2011年作の「Lucidity & Intuition: Homage to Gertrude Stein」という作品のためのものだ。ガンダーと同じくLisson Galleryに所属するコンセプチュアル・アーティストであるヒラーによるその作品は、フォーヴやキュビスムの作家たちとも親しく交友したアメリカのスタイン・コレクションの礎を築いたコレクターであり詩人のガートルード・スタインに捧ぐとしており、ヒラーが長じた自動記述(Automatism)に関連した書籍を小さなアールデコ調の棚に詰め込んだものだ。シュルレアリスムのブルトンが提示しているように、自動記述は意識を人間的な理性、あるいは自我から乖離させていくための手段である。人間の作った文化あるいは制度的な枠組みとしての美術は、猫である「The Squatters」にとってみれば彼らの意識(あるとすればだが)の外にあるものだ。我々人間にとっては歴史的に重要な美術作品を飾るための展示台であったとしても、人としての理性の領域外に住まう彼らには気に入ればそこを領有する自由がある。人でなく、動物でもない造りものの猫である「The Squatters」が侵入者と呼ばれる理由があるとすれば、それは人間的な領域を形成している理性という境界線を踏み超えてやってくる不条理なものの象徴としてである。
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