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City tracks (Omron) Tokyo, Shibuya-Ku
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Year: 1991
Medium: chromogenic print
Dimensions: 44 x 85 cm (17 3/8 x 33 1/2 in.)
Edition: No. 3 of 10
Acquired from Phillips, 2024
シュトゥルートは日本を題材とした写真作品は比較的多く、「街路」のシリーズでは新宿や渋谷など東京の街を、「Paradice」では屋久島の森を撮り、「肖像」シリーズでも日本の家族を多数収めている。本作は当コレクションの美術館からも程近い、かつての渋谷駅の線路上を見渡す街の風景が映されている。スクランブル交差点よりやや南側、東急田園都市線や京王井の頭線の渋谷沿線のかつての様子が窺える。シュトゥルートが街を写す時街の人々への眼差しは極力抑制され、都市そのものの様相を俯瞰的に記録する視座を貫いておりそれは本作にも通底している。ベッヒャーに師事した写真家として、タイポロジー(類型)的写真への発展的回答であるとも言える。バブル経済崩壊の真っ只中であった90年代初頭の東京・渋谷という街。ひしめく街並みをすり抜けて流れる鉄道、大きく誇示されたビルボードの数々が、人間ひとりひとりの事象を飲み下しながら膨張と縮退を続ける都市と資本主義経済に翻弄されるエネルギーの象徴として当時の作家の眼に写ったのかもしれない。この透徹な写真を介して、今もそこにあるものと失われた過去のものが時間を跳躍して交錯する。新たな文化とアイデンティティの発展と縮退を繰り返しながら渋谷の街は今も変わり続けている。