Year: 2006
Medium: pigment print
Dimensions: 134.6 x 106.7 cm (53 x 42 in.)
Edition: No. 3 of 5
Acquired from Phillips, 2024
「Colors of Shadow」シリーズの制作について、「影を観測する為の道具」であると杉本が述べているように、本作は光ではなく影に目を向けた写真作品になる。ストイキツァの『影の歴史』によれば絵画の始まりは影を指先でなぞることだったとある。美術は光によって暗きを照らす啓蒙の装置としての機能を持つが、一方でその光の当てられた裏側には必ず影が現れるのである。いうまでもなくカメラが「光学」装置である以上写真は光をメディウムとして扱う表現手法である。本作において杉本は写真における光と影という表裏の原理に改めて目を向けている。この作品シリーズのために一室を設け、漆喰仕上げの白い壁面の空間を設えたという。漆喰の柔らかく滑らかな表面に跳ね返る光は、同様に直線的でない影の表情を生み出す。杉本の設計によって任意の角度が設けられている室内構造に従って、光と影が刻々と異なる表情を見せていく様子を杉本のカメラが追う。タイトルに「Colors」とあるが、「…深い影が又、余韻をそえる。…思いがけない色を影の中に発見する。」と杉本が書いているように、光の中にではなく影の中に見出される色、つまり陰の諧調の妙を杉本は楽しんでいる。