Gerhard Richter 1, Köln
Year: 1993
Medium: chromogenic print, face-mounted to Diasec, framed
Dimensions: image size : 80.6 by 58.7 cm (31 3/4 x 23 1/8 in.) frame size : 114.6 by 92.1 cm (45 1/8 x 36 1/4 in.)
Edition: No. 5 of 10
Acquired from Sotheby’s, 2024
シュトルートが撮影したゲルハルト・リヒターの肖像。同じデュッセルドルフ美術アカデミー出身の突出したアーティストとして名を馳せる両者は、実は師弟の関係でもあった。シュトルートはアカデミーに入学した当初絵画を専攻しておりそこでの講師がリヒターであり、その後新設されたベッヒャーらによる写真専攻への転籍を後押ししたのも他ならぬリヒターである。シュトルートの作品の中でも「街路」や「美術館」、「パラダイス」などと並びよく知られるのが「肖像」のシリーズであり、本作はその一点になる。シュトルートは本作以外にもリヒターを被写体とした作品をいくつか制作している。他作は家族や環境を含めて写されたものだが、それらに比べて本作はリヒターという人物に向かって真っ直ぐに向けられた視線だけを保存したかのような写真である。このことはベッヒャー派の写真家の中でも特にその「類型」の特質を多分に受け継いだのがシュトルートであろうことがこの一枚からも窺える。一方で、絵画表現の中に写真の話法を取り入れるリヒターの姿勢がシュトルートの写真作品に与えた間接的影響はベッヒャー夫妻の直接的指導に劣らないはずで、その敬意が本作に滲んでいるように思われる。シュトルートの「肖像」では時に8秒間にも及ぶ長時間露光で撮影が行われる。また、事前の対話に時間をかけ、彼らがどのように写真に写されるべきか、という議論を被写体となる人物や家族らと交わした上で制作に臨んでいる。写真が時間性を持たないということはなく、この肖像にはシュトルートとリヒターがレンズを挟んでお互いに眼差しを交わし合った数秒間、もっと言えばそれ以前から長く続いてきた彼らの関係性そのものが表現されている。
© UESHIMA MUSEUM COLLECTION
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