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POOOPOPOO #20
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Year: 2023
Medium: mixed media
Dimensions: 120 x 120 x 5 cm (47 1/4 x 47 1/4 x 2 in.)
Acquired from Yumiko Chiba Associates, 2023
彫刻家・金氏による絵画的展開「POOOPOPOO」のシリーズ。立体的なマチエールを再現する特殊な印刷技術を用いて制作されているため、コラージュ的なレイヤー構造がより強調されて見える。本作では特に強いストライプの表現が幾層にも渡って重ねられている。これまでの金氏の類例平面作品では比較的引用元が何かが見えやすいコラージュ的な表現が中心であり、本作では一転して全面的な抽象表現を見せている点は新たな試みと言える。ただ、抽象表現であることとコラージュ的姿勢とは相反しておらず、本作ではミニマル・アートからオプ・アートの数多くのアーティストからの引用や参照が読み取れる。例えば、青色の緩やかな畝りを伴ったストライプはヴァザルリの「ゼブラ」を彷彿とさせる。画面全体に強い垂直性を性格づけているオレンジ、黒、水色、ピンクなどの縦縞の組み合わせでは、上下で緩やかに捩れるようなグラデーションまでブリジット・ライリーの70年代初頭のいくつかの作品の特徴を踏襲している。また水平軸に目を向けると中央部あたりに浮かび上がっている白い等幅・等間隔の平行線の連なりはアグネス・マーティンを連想させる。本作で金氏は抽象表現の「エッセンス」をコラージュしている。まちまちの画像解像度、JPEG形式特有の劣化による境界のアレ、画像拡大によるボケ、データのグリッチなど、レイヤーごとのイメージの肌理はまるで異なっている。それによって各レイヤーの画面上の物理的高低差と、視覚上で捉える前後の奥行き感とは大きな差異を生じている。また、本作ではさらに特殊な印刷手法によっていかにも偽物の物質感を立体的に演出しているのだから、なおさらこの視覚トリックから抜け出せなくなるのである。