-
光から逃れて / Escaping the Light
-
Year: 2008
Medium: oil on canvas
Dimensions: 162.1 × 112.1 cm (63 7/8 × 44 1/8 in.)
Acquired from SBI Art Auction, 2023
今津の制作スタイルである、インターネット上から集めた画像を複合させて下図を起こしてから油彩にするという手法は2005年ごろから始められているが、本作は比較的その初期の作品であるといえる。夜の都市を空撮したような景色の中に、何故か11人の人物が両手を繋いで輪になっている様子が重ねて描かれている。この突飛とも思えるイメージの組み合わせは、いかにも今津の手法ならではの表現だろう。現在では細かなニュアンスも含めて下図の段階ですでに精緻なコントロールがなされているようだが、初期作品では下図から逸脱する余地を残しつつ筆を進めている。本作では、夜景の光がまるで液体の流れのように揺らめいている様子など、写真のそれではなく今津の絵画的な想像が加えられているようにも感じられる。
宙に浮かんで輪を作る人々の中心と、放射状に伸びる街の光の消失点が重なっている。この絵画の中心点を水平に貫くのは、夜空と街の領分である。目が必然的にこの空虚な一点に引き付けられる。この点は絵画の空間的「高さ」を強調しており、私たちの目は人間のスケールを遥か離れた上空まで導かれる。絵画の空間性に対して目の感覚が親密になればなるほど、不安と共に不思議な高揚感が胸に湧いてくる。