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D after dark - Santa Claus
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Year: 2023
Medium: camphorwood
Dimensions: 185 x 115 x 100 cm (72 7/8 x 45 1/4 x 39 3/8 in.)
Acquired from PARCEL, 2023
樟の木材から掘り出された恰幅のよいサンタクロース像だ。森は素材となる木材の奇形や、ウロ、フシなどを彫刻のディテールにそのまま活かすことがある。本作では豊かな膨らみを見せる腹部、臍の両脇に抉れたような丸い洞穴が空いている。傷や病を思わせるが、それはあまりにも肉体の生々しさを際立たせている。ボクシング・グローブのように大きく、力強く握りしめた両の拳はどことなく暴力性を感じさせる。左親指はサムズ・アップしているがその指先は鋭くささくれておりまるで凶器のようだ。暖かな微笑みを宿した瞳はやや上方遠くに向けられており、高揚した感情が窺える。その顔の真下にたっぷりと蓄えられた髭はいかにもサンタクロースのそれだが、その末端は男性器を模っておりその象徴性が露骨に可視化されている。隆々とした下半身が巨躯を支えているが、その足は4本ある。サンタクロースという題材に似つかわしくない「dark」という言葉にやや思考が偏るのかもしれないが、本作に表された精神は聖性というより「力」、それも圧倒的なボリュームをもって示される暴力に傾いたそれであるだろう。本作が、対峙する人に畏怖を与えるほどの「力」を示しているとすれば、それは森が奇異な樹形の中に潜んでいた荒ぶるエネルギーを能う限り彫り抜いたことの証左である。石の中に眠る生きた像(viva figura)を見たミケランジェロ然り、彫刻とは素材に眠る可能態(dynamis)を見抜き、それを正確な技術と想像力によって現実態(energeia)とする能力を意味するということを、森の作品はよく示している。