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PixCell-Sharpe's grysbok
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Year: 2023
Medium: mixed media
Dimensions: 64.8 x 62.2 x 20.8 cm (25 1/4 x 24 1/2 x 8 1/8 in.)
Acquired from SCAI THE BATHHOUSE, 2023
名和の代名詞的作品シリーズと言っても過言ではない「PixCell」の一点。本作は「Aurora」と呼称される幾つかの「PixCell」作品にのみ施された緑から紫へと変化して見える塗装によって、美しい光彩を透明ビーズの内側から放っている点が大きな特徴となっている。作品に用いられた剥製は、アフリカ南東に生息する小型のカモシカの一種である。本来は赤褐色をしており、そこに乱れた縞様に白い毛が混じる。小さくともがっしりとした体躯、大きな耳の間に2本の短い円錐形の角が生えるという特徴を持つ。「PixCell」は大小さまざまな直径のビーズが作品の表面を覆っており、その大きさの差に応じて異なる屈折率のビーズが無数に重なることによって内側に封じられた物体の造形を歪める。ビーズは視覚を歪め、接触を拒む透明な遮蔽物としてある。Sharpe’s grysbokという日本では馴染みの薄いこの動物の身体的特徴がビーズおよび特殊な塗装によってより認知されにくいものへと変じている。あるいは見慣れた者にとってはそれをよく知るが故に異質化された姿がより異質に映ることだろう。触れることも直視することも許されない存在への畏怖もしくは畏敬の感情を媒介するのである。