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飛んでいる赤と緑 / Flying Red and Green
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Year: 1969-1970
Medium: acrylic on cotton mounted on wooden panel
Dimensions: 20.2 x 30.5 cm (8 x 12 in.)
Acquired from NEW AUCTION, 2023
小さな画面に、元永らしい明るくおおらかな色彩と形が広がっている。端的なタイトルから、朝焼けか夕焼けの空に雲が浮かんだ景色にも見える。元永が吉原に見出されて具体美術協会に入った50年代中頃の作品は山並みや町並みに着想を得たユーモラスな形がよく見られたが、元永の名を広く世界に知らしめた1957年から60年代にかけての絵具を「流す」作品群はフランスのアンフォルメルとの比較において評価されているように画面の抽象度が高い。1966年からのNY時代にアクリル絵具の発色とエアブラシによる描画で発光するかのようなグラデーションの表現を取り入れて、それ以降はユーモラスな形へ回帰していく。本作は日本への帰国後、具体美術協会を退会する直前までに作られた作品ということになる。明るい黄色から次第に紫へと転じていくグラデーションの表現はニューヨーク以降の色彩的な特徴をよく示している。作品同様、おおらかで楽観主義的な人物として知られた元永は自作を「アホ派」や「ファニーアート」と称していたように、常にユーモアや親しみを持ち続けた画家である。難解さや高尚さから逃れようのないもののように思われた欧米の抽象絵画を、楽しいものとして産み直そうと試みた。その態度は、同じ具体の作家である白髪や村上の苛烈さの対岸を向いているとさえ言って良いだろう。本作の、どことなくほほえましい造形性や軽妙な色彩は、元永が終生繰り返した「ユーモラス」という言葉をいかにも想起させる。