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untitled
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Year: 2005
Medium: oil, aluminum foil, mirror
Dimensions: 223.5 x 188.9 cm (88 x 74 3/8 in.)
Acquired from Phillips, 2023
「フォイル・ペインティング(Foil Painting)」と並んでライルの代表的な作品シリーズ「ストライプ・ペインティング(Stripe Painting)」。ストライプを用いた抽象表現は20世紀前半から見られるが、狭義には抽象表現主義 / カラー・フィールドの時代以後、多くの画家によって試みられ、その蓄積によって、ストライプは絵画における形式として既に所与の意味が付き纏っている。抽象表現における手法的パターンとして定着していることを看過したライルはストライプに対して批判的な態度で取り組んでいる。金属フォイルや色鏡を絵具と並置させることもその一端である。色彩の選択も同様にかつての画家たちによって繰り返された色彩論的なオーソドックスを外すものだ。このようにあるべきという期待や常識に対する叛逆や否定を、ストライプの絵画という極めて強い形式主義に従うことによって反語的なステートメントとしている。本作左端にある半円形と3〜4滴の汚れはいかにも制作過程における偶発的な痕跡を想像させるが、「ストライプ・ペインティング」ではシリーズを通して繰り返し画面に表れており、つまりこれは極めて意図的なものである。偶然を装いながら反復されるこの図形は、ライルにとって、形式主義的なるものへの痛烈な批判のシンボルとして見るべきだろう。