Year: 1990
Medium: blue, yellow, pink, red and green fluorescent light
Dimensions: 243.8 x 26.7 x 61 cm (96 x 10 1/2 x 4 in.)
Edition: No. 1 of 5
Acquired from Phillips, 2023
フレイヴィンは1963年、ミニマリズムの先駆者とも目される彫刻家ブランクーシの「Endless Column(無限柱)」へのオマージュとして「the diagonal of May 25, 1963 (to Constantin Brancusi)」を制作した。以後30年にわたる作家人生のほぼ全てにわたって同郷の知人や敬愛するアーティスト達へ作品を捧げ、その敬意はタイトルの副題として示された。本作は同時代の抽象画家アド・ラインハートに向けて10点制作された内の一点となる。ラインハートの代表作といえば黒の抽象画シリーズだろう。一見ただ黒く塗りつぶされただけのように見えるそれは、実は画面をいくつかのグリッドに分け、青、赤、緑を僅かに感じさせる程度の恐ろしく深い色彩をそれぞれ重ね合わせて描かれている。それぞれの黒のニュアンスはようやく知覚できるかどうかという僅差である。フレイヴィンによる本作に目を向けてみると、青、赤、緑を基調とした蛍光灯の光が緩やかに干渉し合い空間を満たしている。フレイヴィンは、今日ではインスタレーションと呼ばれるこうした作品を、光による「Situational(状況的)」な作品なのだと自評した。70年代以後注力していた、まさに光によって空間が支配された「状況」そのものを作品とするサイトスペシフィックな作品群はフレイヴィンの思想の到達点であるだろう。ラインハートの黒を光によって再現することは難しくとも、その精神性はフレイヴィンの美意識と一続きである。「Art as Art」との至言を残したラインハートの、芸術の純粋性を希求する精神に通暁していたフレイヴィンにとって、黒と光は両者の芸術性を等しく照らすものと思われたことだろう。