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Bay of Sagami, Atami
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Year: 1997
Medium: gelatin silver print
Dimensions: image size : 42.2 x 54.2 cm (16 1/2 x 21 1/4 in.) sheet size : 47.6 x 57.6 cm (18 3/4 x 22 3/4 in.)
Edition: No. 21 of 25
Acquired from Phillips, 2023
当コレクションには1998年制作の同名シリーズが所蔵されているが、同じ熱海から相模湾を望んだ「海景」である。暗い海に光が長く伸びている。フォーカスが合わずに朧な様子がかえって幽玄な趣として感じられる。杉本は、海景を1980年ごろから取り続けている。古代の人々も目にしただろうこの水平線は、幾星霜の時を経ても変わっていないはずだ、との思いから撮り始められたという。杉本の写真は、光と空間を時間的に捉える。「海景」シリーズでは、太古に地上が海と空に分たれたその時から変わらぬ光景を収めようとしている。水平線は、目にははっきりとした線として見えるが実際には線として空間上に置かれているわけではない曖昧なものだ。それと同様に、穏やかなグレーの階調が示すように杉本がシャッターを切った時刻は明るい日差しの元でもなければ暗闇の中でもない、曖昧な光に包まれた時間帯であるはずだ。ほぼ真東に海を望む熱海から撮られた本作だが、となればここに写る光は曙光、あるいは明るい月光なのだろう。明かりと暗がりの間に陰翳がある。それは空と海の境界のあり方と重なる。