Year: 2022
Medium: oil on canvas
Dimensions: 227.3 x 227.3 cm (89 1/2 x 89 1/2 in.)
Acquired from N&A Art SITE, 2023
本作は、美術評論家・キュレーターの南條史生が主宰するアートスペースN&A Art SITEにおいて開催された個展「line & colors」において発表された。川内の作品において明らかな特徴である線と色彩に対して、南條は線を精神、色を肉体であると解して、両者の対立的な関係が止揚されることで作品へ昇華されていると極めて端的に評定している。本作において、巨大な上半身が心臓を抱き抱えるような描写がダイナミックな線によって表現されている。人物を取り囲むように獣と人の頭部が連鎖して描かれているが、それは人間性の影に潜む獣性を思わせる。色彩は圧倒的な質量を伴った赤を基調としており、それはまさに肉体の表象としてである。精神とは肉体という物質性に対して形而上における人間の本質をいう。川内は食べ、消化し、排泄することによって生きるという根本的な生命維持活動に対する疑義を抱えて生きてきており、この疑義が川内の精神の少なくない領域を占めていることこそが作品制作の動機に他ならない。しかしその精神性は肉体を苛む矛盾を孕んでしまう。南條はアガンベンを引用して川内の内なる相剋を愛と評したが、それは同じくアガンベンの「剥き出しの生(zoe)」を念頭においてのことであっただろう。社会的に生きるのではない。ヒトという動物としての純然たる生に向き合い、抵抗し続けてきた川内だから描くことのできる精神と肉体の絵画がここにある。