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Third Belly
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Year: 2021-2022
Medium: oil on canvas
Dimensions: 152.7 x 213.7 cm (60 1/8 x 84 1/8 in.)
Acquired from Phillips, 2023
オレンジ色の太く力強い「チューブ」と青を基調とした細切れの「チューブ」の対比、黄色いドローイングの線、鋭いカービングによる抽象的な多重線。クインの作品の特徴とされる要素が非常に強く出ている。特にオレンジと青の対比的な色使いによって前後の奥行きを錯覚させるような視覚効果が生じ、画面サイズ以上に大きな絵画空間を想像させる。「チューブ」によって画面に生じている激しいムーブメントの中に混ざり合うようにして、黄色いドローイングが表れており、何かの生物のパーツや人の指を描いているように見えるが、正しくは判別できない。それらは膨大に描き溜めたドローイングのアーカイブからモノプリント(一回性の強い版画技法)によって転写されている。他作にも作品間を跨いで同じモチーフが用いられることもあり、それらは個別の作品としての具象性を超えて繰り返される記号となっている。また、カービングによって絵具を剥ぎ取るようにして描かれた線は色を伴わないが、塗り重ねによって隠された背景の色彩を再び画面に呼び覚ます。これらの三要素がクインの作品における極めて複雑な抽象化を実現させている。異なる性質が重なることでそれぞれの要素が反発し合って、3DCGのテクスチャが不調和を起こした時のような非自然的絵画空間が発生している。色彩によってのみならず、線によってのみならず、クインの作品はそれらの複雑極まりない重層性が生み出す現代的な絵画空間によって新たな抽象絵画の可能性を提示している。