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SILENCE
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Year: 2005
Medium: neon
Dimensions: 15.2 x 61 cm (6 x 24 in.)
Edition: #1 of 3
Acquired from Phillips, 2023
コンセプチュアル・アーティストであるエヴァンスの作品は、作品としての物質性や物体よりも、その作品がいかなるコンセプトをいかなるコンテキストの中で表しているのか、という点に最も重点が置かれている。また、エヴァンスの作品では、美術史上の先行例を引用し、文学作品のテキストを題材とするなどのシミュレーショニズム的な態度が極めて自覚的に行われている。エヴァンスは、現代美術作品の制作の材料として、暗黙のうちに前提とされているさまざまな概念について、自己言及的に示している。
本作は「SILENCE」という単語をシンプルなフォントのネオンサインで示した非常に簡潔なものだ。しかし、アルファベットの一文字の大きさが末尾の「E」に向かうに従って次第に大きく示されている。それを一つの単語と認識するにあたって、私たちはほぼ経験的に左端の「S」から右端の「E」に向かって目を進ませていく。ゆえに、この作品全体が示す造形はまるで音楽のクレッシェンド記号のように次第に増大する音量を想像させるが、それによって「SILENCE」という語意と作品の認識にズレを生じさせている。あるいは、この文字サイズの不等を空間的に捉えるならば、薄闇に浮かび上がるこの単語は奥から手前に向かって迫り出してくるように錯覚されるだろう。さらには、「SILENCE」という単語が喚起するさまざまな社会的、文化的、政治的な意味合いについての思考を鑑賞者に向かって促すこともあるだろう。エヴァンスのコンセプチュアル・アーティストとしての態度とは、こうした極めて重層的な思考のパラフレーズに集約されていると言って良い。