untitled
Year: 1968
Medium: watercolor on paper
Dimensions: work size: 18.1 x 29.5 cm (7 1/8 x 11 3/8 in.) frame size: 39.4 x 48.9 cm (15 1/2 x 19 1/4 in.)
Acquired from Tomio Koyama Gallery, 2023
主に彫刻家としての名声が高いブルジョワは、実際には活動初期から多くの絵画作品を制作している。水彩のドローイングにおいては、後の彫刻作品の源流になっているであろう植物、風景、人物など様々なモチーフに取り組んでいるが、随所に用いられる赤はブルジョワにとって強く激しい意味を持っている。ブルジョワの赤は、血であり、肉であり、暴力や痛みの負の感情である。本作は海景であろうと思われる。白い波濤が赤い空に向かって激しいうねりを繰り返している。ブルジョワの昂る感情が波となり、空を赤く染めてこちらに向かってくるようだ。ブルジョワの作品では、そこに描かれる人体は自然物と融合するようにして象徴性を帯びて描かれる。ブルジョワは自らの肉体と精神が抱える痛みや苦しみを美化することはないが、作品の中では彼女のトラウマがその忌むべき人の体から解放されているのだと言い換えても良いだろう。乳房は丸みを帯びた山並みになり、髪は蔦のように伸びて絡み合う。本作ではそうした直接的な表現は表出していないが、画面中央下部にある白い空白がブルジョワ作品に多く描かれる出産する女性のシルエットによく似ていることは注目すべきだろう。鮮烈な赤い空、激しく逆巻く波、しかしどこか柔らかな造形で描かれるそれらは、痛みと重なった産みの喜びを想像させはしないだろうか。
© UESHIMA MUSEUM COLLECTION
本サイトに掲載されているデータは著作権の保護の対象となります。無許可での転載・転用はご遠慮ください。 Any materials on this website are protected by the copyright law. No reproduction without permission allowed.