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Walking on Afroturf
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Year: 2012
Medium: reclaimed wood
Dimensions: 113 x 77.5 x 10.2 cm (44 1/2 x 30 1/2 x 4 in.)
Acquired from Phillips, 2023
ゲイツは例えば「Ground Rules」シリーズや「Thrones」シリーズなどに見られるように、ある特定のコミュニティ内における社会的な問題に対して実践的に対処していくプロジェクトを続けている。特に、人種間や貧困による格差や不安定な治安が問題とされているシカゴのサウス・サイドのコミュニティへのコミットメントは特筆すべきゲイツの活動の一つだ。地域の不動産を自らの力で買い取り、廃屋から得られる資材を用いた作品を制作販売することで得た収益によって安価な住宅やアーティストの活動スペース、コミュニティスペースなどの整備を行い、地域に還元していくのである。本作は、タイトルからも推察されるようにそうした活動の中でいずれかの廃屋から出た床材などを集めてストライプ状のタブローに再構築したものだろう。こびりついた緑や白の塗料や、激しく荒れた表面の様子からかなりの年季を経たものであることがわかる。一見するといかにも抽象表現主義然とした端正な相貌を見せる作品を前にして、その表層的な享楽に満足していてはならない。かつてその上を歩いたであろう数多の人の人生の堆積によってこの画面が作り出されているのだという厳然たる事実が現前しているのだから。しかし、単なる感傷では社会に変化はもたらされない。資本主義国家の一地域において美術が何か実社会へのコミットメントを示せるとすれば、それはまず作品と資本の交換が実現し、そして何よりも作家の強固な意思と実行力からその資本が地域社会へと還流せらるることによって、である。ゲイツは、自ら掲げる高い理念に起因してこそ自身の作品が社会的意義と同時に金銭的価値を持つのだという、ギャラリーシステムを含む現代美術マーケットの構造とその力の行使についてを真に理解している稀有なアーティストである。言うなれば都市計画的視座と美術の経済的視座を自覚的に行われる社会実践的な一連のプロジェクトの総体こそがゲイツの美術作品であり、それは中央集権に頼らずして行われる新たな公共性の実現に他ならないだろう。