Year: 2022
Medium: oil on linen
Dimensions: 182 x 228 cm (71 5/8 x 89 3/4 in.)
Acquired from Kenji Taki Gallery, 2023
赤く光るネオンサインで暗がりに浮かび上がる「LOVE」。金属フレームやケーブルの光沢、床板の木目、発光するネオン管の眩さなど、描画の技術は極めて優れている。しかしこれは単にネオンの光を表現した写実的な絵画というわけではない。横山は、継続的に取り組んでいるこのネオンのシリーズにおいて言葉(文字)によって表わされるものを絵画によって表されるものへと置き換えようとしている。言葉(文字)によって表されるもの、とは実に多様である。本作ではまず「LOVE」という英単語が示す意味、作家が母語である日本語の「ラブ」あるいは「愛」への翻訳、あるいは、それを発話する際の口調や書字する際の筆跡などによっても表されるニュアンスは様々に変わる。そして、そこに表れてくる差異は極めて経験的かつ属人的なものだ。タイトルに「Shape of Your Words」とある通り、このシリーズで扱われる「Words」(言葉/文字)とは、「Your」(あなたのもの)と所有格が明示されている。本作ではE.M.という人物によって書かれた「LOVE」を辿っている。E.M.氏によって手書きされた筆跡を、技師がネオン管によって忠実に再現する。横山はそのネオンを眼前に置きながら描く、という過程を経て制作されている。E.M.氏が「LOVE」と書いて欲しいと作家に依頼された時、おそらくは氏が胸に思い描いた観念的なる「LOVE」があったはずである。そのE.M.氏の主観を通して表象された「LOVE」は文字となり、次にネオン管によって模され、さらに横山によって絵画として写される。横山はこの極めて具象性を保ったイメージの推移の中で、E.M.氏固有の筆跡を文字として模倣しようとしたのではなく、E.M.氏によって内観されたはずの「LOVE」をその筆跡を媒介として絵画的に抽象しようと試みたのだ。幾重もの複製的過程を経て私たちの目の前に表れている「LOVE」はいわば、顔の見えない肖像である。