-
Work E. 369
-
Year: 1988-89
Medium: acrylic on canvas
Dimensions: 73 x 53.2 cm (28 3/4 x 21 in.)
Acquired from SBI Art Auction, 2023
長い画業の中で、静物から抽象絵画まで段階的に作風を変化させてきた山田の中核をなす「Work」シリーズ。1956年から1995年のおよそ40年間続けられ、十年紀毎にBからFまでのアルファベットが与えられており、従って80年代制作の本作は「E」を冠する。「Work」シリーズは時代区分だけでなく内容からも大まかにストライプ、クロス、グリッド、などと分類されるが、本作はクロスの特徴が顕著である。ちなみに山田の作品の内でももっとも知られているであろうストライプの表現は「C」(60年代)の時期に集中して制作されている。山田は終生でおよそ5000点の作品を残したが、それら全作品もまたひとまとまりの作品であるという認識を持った稀有な作家である。静物画から抽象化していく初期、そこからグリッド、ストライプなどの単純化を経て描かれたであろう、本作を含むクロスのシリーズは初期の抽象化のプロセスへの揺り戻しのようにも見える。画面には十字の図が二つ、浮かび上がって見えるほどに目を射る。そしてその背景には対比的な形象の曖昧さを持って幾つかの明るい色彩がおおよそ斜め方向に塗り重ねられて、豊かな空間性を作り出している。静物画、キュビスム、ミニマリズム、さまざまな様式を消化しながら独自の絵画性を孤高に切り拓いていった作家最盛期の作品。