Year: 2005
Medium: charcoal on paper in artist’s frame
Dimensions: 62.7 x 62.7 cm (24 5/8 x 24 5/8 in.)
Acquired from Phillips, 2022
ロンゴが2005~2006年頃に取り組んでいた惑星などの天体を描いた「OUTWARD AND VISIBLE SIGNS」という大判のドローイング作品シリーズがある。本作はその名の示す様にシリーズの一枚であるもののコンパクトな作品になっている。金星を描いている。地球に最も似た天体であるとされる金星には大気層があり、主成分は濃硫酸ではあるが雲も発生する。ロンゴは、おそらく詳細な天体観測データをもとに本作を描いているのだろう。金星の極にある特徴的な大きな渦が克明に描かれている。また、蝕の部分は背景の黒く塗りつぶされた宇宙空間に溶け込んでいるが、作品を間近に見ると、やや筆圧や濃度を変えた金星の半身が丁寧に描かれているのが分かる。ロンゴの木炭作品は、描かれているシーンのインパクトに目を奪われることも多いが、本作のように非常に繊細な描画技術はやはり第一人者ならではのものがある。天体を模したロンゴの初期作として有名な彫刻作品「DEATH STAR」は18000発もの弾丸を球体に固定したまさに死の天体であったが、それに限らずモノクローム映像の一コマを切り出したかのように描かれるロンゴの作品には、どこか擬死的なものを感じさせられるものが多い。本作においても最も近い惑星である金星ですら我々人類の生からは遥かに遠くかけ離れた存在であることを思わせる。死を思うことは生を思うことでもある。