Year: 2022
Medium: acrylic, oil, oil bar, oil pastel on canvas
Dimensions: 200 x 170 cm (78 3/4 x 66 7/8 in.)
Acquired from Taka Ishii Gallery, 2022
深い森にふと明るい光が差し込んだような清涼感のある作品。落ち着いた緑の色面が広がるその奥に、まるで木漏れ日のようにまばらに明るい黄色やピンクが覗いている。透明度の高い絵具を重ねているのだろう。近づいてみると非常に多様な色彩が何重にも折り重なっているのが透けて見える。本作が力強くも大胆な筆致ながらも繊細で美しい光を湛えているのはこのためだ。ただ力任せに筆を振るうのではなく、色と光と線とを自在に操りながら、その時々において画面から迸り出す素晴らしいヴィジョンを捕まえていくことが楽しくて堪らない、そういった作家の姿が目に見えるようである。不意に空間を切り裂くように入れられた黒い枝のような描写は、奔放さに酔いしれそうになる画面に程よい緊張感を与えている。COVID-19によるロックダウン中、アトリエから出られない彼女はそれが故に想像力をより豊かに働かせ「translating nostalgia in a dream world(夢の世界で郷愁を翻訳すること)」によって制作を続けたのだと述べている。ファドジュティミは制作にあたって音、場所、テキストなどさまざまなものに惹起されたインスピレーションによって絵画を生み出す。本作がそうであるように「Nostalgia」は作家の内面にさまざまに現れた美しい霊感の痕跡としての色彩と線描の重奏となって画面に翻訳される。