Year: 2012
Medium: two painted chairs, thread, steel frame
Dimensions: 180(h) x 160(w) x 77.2(d) cm (70 7/8 x 63 x 30 3/8 in.)
Acquired from Sotheby’s, 2022
塩田千春の「State of Being」(存在様態)シリーズの一点。塩田の彫刻作品では、特定のオブジェが繰り返し使用されてきた。鍵やドレス、本、船、靴、鞄など、どれも人が携えたり身につけたりして人の生活と共にあるものが多い。椅子もそのような多用されるオブジェの一つである。張り巡らされた糸の中で、二脚が静かに寄り添っている。この二脚にはかつて誰が座っていたのだろうか。「不在の中の存在」を表現する作家、と度々評される塩田。生活の中で身近に扱う家具がその本来の機能を剥奪され、まさにその存在を宙吊りにされた状態を目の当たりにした時、その椅子とかつて日々を共に過ごしていたであろうはずの既にここにはいない誰か、を思わずにはおれない。しかし、真っ白に塗り潰された椅子からは、かつてを類推することも難しい。その分、本来そこにあるべきはずのものの「不在」を強烈に感じさせ、それが故にその「存在」を想起させるのである。塩田の黒い糸は宇宙、赤い糸は人と人の関係性を表するとされるが、さしずめ、その中に封じられる白は存在を認識するための受け皿としての色であるだろう。