/home, /home (absence)
Year: 2021
Medium: single channel HD video with stereo sound, each
Running time: 9 min. 24 sec.
Edition: /home: #5/8 + 2A.P, /home (absence): #1/4 + 1A.P
Acquired from Ota Fine Arts, 2023
「/home」と「/home (absence)」という対となる二つの映像作品は、あるいは表裏の内容を表している。この映像に映し出されている室内は作家がかつて育った家の室内であり、2017年に両親の転居に伴って空になった状態を撮影したものが使われている。ここでの家、とは帰るべき場所や家族という繋がりの象徴を意味している。長らく英国を拠点に活動を続けてきたさわにとって、国籍としての日本、帰属としての家族、それらの拠り所になっていたものの一つが故郷の家であっただろう。「/」には記号としてさまざまな意味があるが、「/home」と書く場合それはLinuxのプログラムではホームディレクトリを意味する。ユーザーはシステムにログインする度に必ずこの場所に配置される。これは、さわにとって家というものが何かを示唆している。そこに再び戻ることが無意識のレベルまで自らに染み込んで(プログラムされて)いるものとしての家。さわが経験した家の喪失とは根源を揺るがすことだ。家具が取り払われ誰もいなくなった室内には、かつての家庭の様子を窺わせる傷や汚れなどの痕跡と、窓から差し込む光と影があるばかりだ。それらを背景として去来する無数の飛行機はそこで繰り返される旅立ちと帰還の双方を可視化している。一方で、「/home (absence)」では飛行機の姿はなく、ただ音だけが通り過ぎていく。地上からはるか上空を見上げると、既にそこにはいない機影を追いかけて音は遅れて聞こえてくるように。「home」とは建物ではなく営みのことだ。この二つの映像作品は、かつてその家はそこへ帰るべき人のためにあったのだ、という過去に向かって通り過ぎていく事実についてを思わせる。それは家という営みに関する痕跡と残響の映像であるだろう。
© UESHIMA MUSEUM COLLECTION
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