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Aug-28-1999
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Year: 1999
Medium: oil on canvas
Dimensions: 72.7 x 91 cm (28 5/8 x 35 7/8 in.)
Acquired from SBI Art Auction, 2022
赤と青の対比的な2色が緩やかな造形を伴って癒合している。中間地点へ向かうにつれて次第に暗く影になっており、色彩そのものはお互いに混ざり合う様子は見られない。この時期の辰野は、いくつか同様の作品を発表している。いずれも、色彩あるいは構図において二項対立的な作品が多く、そして、光と影を感じさせる巧みな表現によって、絵画の中に奥行きを見事に作り出している。本作においても、深いドレープ状のカーブ構造を成しているかのように見える。遠近法をはじめとするイリュージョンをもって絵画は平面のなかにおいても空間を錯覚させる。辰野はそれが錯覚であることを常に自覚した上で、その範囲内において端的な抽象表現を貫いた作家である。本作において、明暗法と補色対比という実にシンプルな手段によって実現された豊かな絵画空間はいかにも辰野らしい表現であると言えるだろう。