TOEKO TASTUNO
辰野登恵子

Aug-28-1999
1950年長野県生まれ、2014年没。1972年東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業、1974年東京藝術大学大学院美術研究科絵画専門課程油画専攻を修了。現在では日本を代表する抽象絵画の作家として高く評価されているが、実際にはキャリアの最初期にあたる70年代にはシルクスクリーン版画、あるいはドローイングによる作品制作が大半を占める。折しも海外の美術シーンではミニマリズムの台頭する時期と重なり、辰野の最初期のグリッドによる表現は、先行する抽象表現主義/ミニマリズム過渡期の代表的作家Agnes Martin等とも、その指向性に関連性が見出されることも多い。辰野自身が自らの作品について「反復と連鎖」と表現しているように、グリッドや装飾的モチーフ多用することは、辰野の現代美術の原体験でもあるポップアートの旗手ウォーホルを参照すれば自ずと理解されるように、均質にパターン化されたものの「反復」、つまりは平面上に「版」を重ねることによって「連鎖」的に立ち上がる絵画的なるものについてを再考すべしという、ポップアートおよびミニマリズムとの共鳴がそこにある。版画における「版」の概念は、絵画における「平面性」と遠くはなく、そこから生じうる抽象表現を辰野は終生実践した。東京国立近代美術館での当時最年少での個展(1995年)を開催するなど、キャリアを通じて国内外において常に高く評価され続けた。