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untitled
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Year: 2016
Medium: assembled canvas on aluminum frame
Dimensions: 86 x 58.5 cm (33 7/8 x 23 in.)
Acquired from PERROTIN, 2022
村上のアイコニックなキャラクターでもあるフラワーがプリントされているキャンバスをパッチワークのように継ぎ接ぎをしている。村上のこれまでの作品ではスタジオの高い制作クオリティに担保された冷徹なまでに完璧な仕上げが一貫されているが、本作はどこか温かみのある揺らぎが感じられる作りになっている。細かい矩形に切り貼りされているそれぞれの端切れをよく見てみると、プリントのインクずれや色ムラ、塗料が剥がれていたり掠れや汚れも多く見られる。通常の村上作品では全くの失敗と言って良いこうした低品質のプロダクトを寄せ集め、手芸におけるパッチワークという形式を引用することで、絵でもプリントでもない別のカテゴリに属するタブローとして転生させている。作品全体の色調の整え方や手芸的手法の援用としてはバウハウスの作家アニ・アルバースの作品を彷彿とさせる。村上は常に先行する美術史に対して再定義と脱構築を繰り返し、その上に新たな美術の土台を作り上げてきた。本作では村上作品を特徴づける露悪的でさえある派手さは鳴りを潜めているが、しかしその一方で村上のもう一つの大きな特徴である美術史的文脈への鋭い視線を感じさせる。