Year: 2004
Medium: chromogenic print
Dimensions: image size: 241.3 x 180.3 cm (95 x 71 in.) frame size: 250.2 x 190.5 cm (98 1/2 x 75 in.)
Edition: A.P. #4 from an edition of 6 + 4 A.P
Acquired from Phillips, 2022
「Pictures of Magazines」のシリーズより、著名なゴッホの「アイリスのある静物」(所蔵:ゴッホ美術館, アムステルダム)を引用元とした作品。ゴッホはこの当時、耳切り事件を起こした後でプロヴァンス地方サン=レミにあるサン・ポール・ド・モーゾ修道院病院での療養生活を送っていた。この療養期間中、ゴッホ自身は退屈で苦悩の日々と綴っているものの、有名なオルセー美術館の「星降る夜」、診療所の入所者の肖像、明るい院内の庭や近隣の風景画や、本作も連なる「アイリス」のシリーズなど、100点以上の絵を描いている。特に、絵画の象徴論的には死を象徴する糸杉の絵や、ゴッホ晩年特有の渦巻きの描画はこの時期以降に顕著になっていく。ムニーズは「Pictures of Magazines」において、雑誌の切り抜きを駆使したコラージュによって名画を再現している。ゴッホは近現代の絵画におけるインパスト(厚塗り)技法を実に個性的に実践した作家の一人だが、ムニーズのコラージュの手つきは明らかにその物質性という点においてゴッホとその絵画の立体的造形感覚に共感している。コラージュが見せる過剰な重層性は、単に「アイリスのある静物」を図像的に模倣するにとどまらず、その情熱的ですらあるゴッホの激しい筆致を見事に捉えている。「アイリスのある静物」はサン=レミの生活に限界を感じていた最後の日々に描かれている。穏やかなサン=レミの風土の中、他者には決して理解されない内面的苦悩と止まることのない創作への情熱に浮かされ続けていた当時のゴッホの張り詰めきった感情が、静かな画面の中に秘められていることを思う。本作の制作で、ゴッホのアイリスをなぞりながらムニーズは何を受け取っただろうか。