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TESLA - IKAZUCHI
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Year: 2014-2015
Medium: oil, glue, beeswax on linen
Dimensions: diptych, 123.8 x 370.5 cm (48 3/4 x 145 7/8 in.) overall
Acquired from Everybody Needs Art, 2022
福井は2011年の東日本大震災を契機にエネルギー問題へと目を向け、その過程でエジソンのライバルであり不遇の天才ニコラ・テスラに関心を持った。テスラの残した研究内容から着想を得て絵画制作に取り組んだのが本作を含む「TESLA」シリーズである。テスラは現代でも世界中の送電システムとして実用されている「交流」や、無線通信の基本理論や蛍光灯を生み出した他、当時あまりに革新的すぎたワイヤレス送電システム構想「世界システム」を提唱した。福井は、テスラの名を冠した本シリーズにおいて、「世界システム」研究が仮に実現化されれば世界中のエネルギー問題の改善や地球規模の社会改革に結びつくのではないか、との思いを絵画に表している。二面一双の広い絵画空間に空中放電によって発生した数条の青白い閃光を鋭く描いている。膠や白亜によって丁寧に作られた下地に深みのある青と黒が重ねられ、電光を描く線は光の反射によって玉虫色に変化する。副題として付けられているIKAZUCHIはすなわち雷であるが、日本においては古来の神名にもある通り神格視されている。また、雷の別名「稲妻」は高き天より地上の稲田へ豊穣を下すものの意味である。テスラが思い描いた空気中から無限にエネルギーを得るという理想の世界は、福井の中で日本の「雷」に対するイメージと重なるものがあっただろう。