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In the Soil
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Year: 1991
Medium: acrylic on cotton
Dimensions: 100 x 80.5 cm (39 3/8 x 31 3/4 in.)
Acquired from SBI Art Auction, 2022
現在ではステイニングによって淡く滲んだ風景を描くことで知られる丸山だが、1980年代の学生時代から1990年代前半ごろまでは、細胞のような、と評される有機的な図形と色彩による抽象的な作品を発表していた。本作は1991年の作品であるため、丸山がBゼミを出た後すぐの作品となる。Bゼミ以前には服飾関係の専門学校で学んだ丸山はキャンバスの代わりに余り布を用いて絵画を描き始めた。本作でも薄いコットン生地をフレームに張り込んでいる。本作では、下地の上に白味を帯びた明るい黄土色が引かれ、画面全体がまるでほんのり明るい黄色味の光を帯びているように見える。この淡さは、色彩が深く染み込んで布地と一体化していく丸山特有のステイニングの技法にもおそらく同じ感性が引き継がれていると想像できる。絵画全体の地にあたる黄土色の中に、いくつもの楕円形が強い線描によって浮かび上がって見える。間近に見てみるとそれが表層の絵具を削り取って作られた線であることが分かる。下地として塗られているオレンジから白へのなだらかなグラデーションをそれぞれの線描が削り出している。現在でも水の波紋や樹木の枝などの表現に比較的はっきりした線が用いられることはあるが、そこでの丸山の線は物と物の境界や輪郭を示すのではなく、物の形象そのものを表している。本作に見られるかつての丸山の鋭い線描が、現在のような表現へと転じていく過程を想像してみるのも面白いだろう。