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上海での隔離 / Quarantine in Shanghai
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Year: 2021
Medium: water-soluble wax pastel, ink, thread on paper
Dimensions: 20 x 25 cm (7 7/8 x 9 7/8 in.)
Acquired from KENJI TAKI GALLERY, 2022
「上海での隔離」シリーズは、自らの展覧会のために訪れた上海で、政府によるCOVID-19の防疫政策に従いホテルで隔離期間を過ごすことになった塩田が、そのストレスフルな時間を作品制作へと振り向けることで乗り切った成果物である。苛烈なゼロ・コロナ政策を取っていた当時の中国において、上海の人々の生活は塩田の目にいかに映り、また塩田自身に何をもたらしたのだろうか。塩田は、生と死という生物にとって根源的な命題を作品の主題に置く作家である。コロナ禍とは、即ち、人類史状稀に見る生存領域の争奪戦であるとも言える。目に見えぬウイルスの脅威に対して、人は感情と肉体を限界に晒しながら知によってそれに抗ったのである。本作でも見られる塩田作品の象徴となっている糸は、ウイルス同様に目に見えぬものでありながらも脅威とは真逆の性質を表している。人と人の心の繋がりであり、生と死を跨ぐ人類の命脈である。本作では一軒の赤い家から黒い糸が走り出ている。その家は窓も扉もない閉鎖的な様子で表現されており、そして、糸の繋がる先は描かれていない。密集する家屋の風景でありながらも、孤立を強く感じさせるのは隔離当時の塩田の心理を強く反映しているのではないだろうか。