Year: 2022
Medium: charcoal on paper
Dimensions: 65 x 100 cm (25 5/8 x 39 3/8 in.)
Acquired from Pace Gallery, 2022
本作はこれまで主に絵画を主体とした制作でしられるゲーニーにとって初めての本格的な木炭画によるシリーズの一点である。Otto DixやWillem de Kooningなどと比較して述べられるようにゲーニーの作品は具象と抽象の狭間にある。人間の精神と肉体の内に秘められたものを剥き出しにしたかような表現で知られる。これまでのキャンバスの作品では、絵具の流動性を生かした滑らかなストロークによって柔らかい肉感を伴った官能的とも言える描写がその特徴を増幅させていた。本作では紙に木炭という、全く異なる素材でありながらも、キャンバスと絵具で獲得してきたゲーニー特有の生々しい表現を見事なまでに実現している。モノクロームでありながらも色を感じさせるほどに豊かな濃淡のコントロールと、紙上を澱みなく走る木炭の線の強弱によって項垂れる人物から滲み出すような暗い心理を描写し切っている。新しいテクノロジーに対して忌避を感じるというゲーニー自身の投影だろうか、人物の手に握りしめられたスマートフォンのような持物がこの作品全体を覆う不安定さを象徴しているように思われる。