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data.scan [n°1b-9b]
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Year: 2011 / 2022
Medium: LCD monitor display, computer
Dimensions: 61.1 x 35.6 cm (24 x 14 in.) each, a set of 9
Acquired from TARO NASU, 2022
9枚のディスプレーに表示される夥しいデータの奔流が本作のコアである。自らをコンポーザー(Composer)と称する池田にとって、音楽と視覚芸術の両者を制作するにあたって通底するものは、データによって観測されうる普遍性を構築することである。本作は2006年から続く「datamatics」と名付けられたプロジェクトの一環として制作された。世界を表す最小単位をデータと仮定した場合、それが可視光であれば画素、可聴音であれば周波数の解像度を極限まで上げていくことで無限の広がりが立ち現れてくる。池田は「不可視で多様な実体性」と表現しているが、人間はその不可視のものを可視化するための合理的な指標としてデータというものを扱っている。本作において、9つのディスプレーではそれぞれ異なるヴィジュアルが表示されているが、それらは二次元的なディスプレーの中において、何らかのデータをビジュアライズするマニピュレーションがコンピュータによってなされ、その結果として多次元空間的なモデルとしてそれは示されている。もはや人間の処理能力を遥かに凌駕する情報の洪水を前にして、私たちはそれが何を意味するかを問われはしないだろう。それらが莫大な情報と計算により観測された正しく不可視の概念が、可視の現象として表わされているという事実に対して崇高にも似た畏怖をもって対峙するのみである。本作は2022年の弘前れんが倉庫美術館での個展および、同年の岡山芸術交流2022において展示された。