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光は闇のなかに輝いている / Light Shining in Darkness
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Year: 1992
Medium: acrylic on canvas
Dimensions: 182 x 228 cm (71 5/8 x 89 3/4 in.)
Acquired from Hino Gallery, 2022
松本のピンクの絵画シリーズといえば、日本における抽象表現主義およびカラーフィールドの直接的な実践者としての代表的な作品にあたるだろう。本作においては、150号のキャンバス全体にピンクを中心としてオレンジやグレーの筆触が折り重なったダイナミックな色面が広がる。当時の松本は、床にキャンバスを広げ、その上に乗りかかるようにして描いていたと言う。抽象絵画に対して、没入感などと表現することがあるが、松本のピンク色の作品は特に、自らの体そのものを絵画の中に飲み込ませるようにしながらまさしくオールオーヴァーを目指したのである。松本は決して大柄な人物ではなく、たとえ絵筆を握った両の手を広げても本作の短編には遠く届かないだろう。しかし、この画面はどうか。湧き上がる叢雲のような流動するエネルギーを内包し、淡い色彩とは裏腹に熱く激しい情念を、画面に収まりきらないほどに露わにしている。本作は、2005年 神奈川県立近代美術館鎌倉で開催された「今日の作家 X ⻄村盛雄・松本陽子展」、および2009年に国立新美術館で開催された「光 松本陽子 / 野口里佳」展で紹介された。