網膜/太陽風1 / Retina/Solar Wind 1
Year: 1990-2020
Medium: urethane resin paint on chromogenic analog print mounted on wooden panel
Dimensions: 230 x 170 x 10 cm (90 1/2 x 67 x 4 in.)
Acquired from Take Ninagawa, 2023
広範な大竹の作品形態の中でも特に平面的な画面を有する「網膜」シリーズの一点。本作の特筆すべきはその制作期間にある。1990年から2020年に至る30年もの年月が作品の中に封じられている。「網膜」は露光の失敗によって破棄されるべきはずだったポラロイド写真から着想されている。過度に観光して対象物の形象を可視化できなかった成れの果てであるこの抽象的な赤い画面は、本来何を眼差していただろうか。「網膜」とは目の中で光を感受し図像を情報として脳に送り出す働きをする器官だ。カメラで言えばまさにフィルムがそれに相当し、現像の際の引き伸ばし機によって図像を受光する印画紙の上でそれは繰り返される。「網膜」という作品はまさに人の目がイメージを捉え脳内で現像する、その光学的かつ心理的な現象を示している。大竹の作品ではコラージュ的な堆積が繰り返される。本作においても、複数回の現像が繰り返されている。作家の目、カメラ、引き伸ばし。そこに物理的なレイヤーがさらに重なっていく。支持体の厚いパネル、プリント、そしてウレタン樹脂の層である。そして、そこに30年の時間が重なる。この時間の経過によって少なからずプリントされた写真に変化が加わったはずである。平滑に仕上げられたウレタン樹脂の表層は作品の中に堆積した時間と物質と現象に封をし、保存するのである。それは大竹にとってのイメージの在り方を示すだろう。
© Shinro Ohtake. Courtesy of Take Ninagawa, Tokyo.
© UESHIMA MUSEUM COLLECTION
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