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ウイルス / Virus
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Year: 2022
Medium: acrylic on handkerchief
Dimensions: 26 x 27.3 cm (10 1/4 x 10 3/4 in.)
Acquired from Tomio Koyama Gallery, 2022
工藤の作品は、日常と絵画の境界が緩やかに交わる。本作は、筆を洗う際に、と母親から贈られたハンカチを支持体として選んでいる。猫と暮らし、絵中にもよく猫が登場する工藤だが、本作ではハンカチの絵柄が愛らしい黒猫になっているところが何とも微笑ましい。しかし、描かれている人物は顔を真っ直ぐ前に向けて目を瞠っており、その横顔はかなり強張って見える。タイトルは「ウイルス」である。ハンカチに点々とプリントされた黒猫などの図案が、待機中に蔓延り人類に猛威を振るう目に見えない脅威の比喩に思えてくる。本作の制作は2022年であり、発表当時も依然として世界はCOVID-19の脅威に晒され続けており、それと戦うことが人類の大命題となっていたこともあって多くのアーティストは彼らなりのソーシャル・コメンタリーとして、あるいは願いや祈りとして作品に表した。工藤のハンカチの作品は本作を含めていくつか制作され、ギャラリーや美術館での展示の際にはまるで洗濯物を干すようにロープに吊るされて、宙空で軽やかにゆらめいていた。