By physical or cognitive means (Broken Window Theory 13 May)
Year: 2019-2020
Medium: ink on paper, emulsion paint, aluminum frame, reinforced broken glass, duct tape
Dimensions: 200 x 148 x 7.5 cm (78 3/4 x 58 1/4 x 3 in.)
Acquired from Taro Nasu, 2022
本作はガンダーが「Broken Window Theory」と称する作品シリーズに連なる。コンセプチュアル・アーティストとして知られる作家だが、本作においては極めて物質性の高い方法によって作品を構成している。まず、大きなアルミ製フレームに入っており、厚みもあるため壁面に飾られた際には著しい存在感を放つ。一目して分かる通り、ガラス面が大きく割られており、黒いダクトテープでそれを固定している。ガラスの両面からやや大雑把な手つきで貼られたテープは黒と白の抽象的な線を構成しているように見える。それは、作品であることを前提としているためだろうか。ガラスの更に奥のベースパネルは、白い塗料が塗られておりその液垂れの痕跡が生々しく透けて見えている。アルミのフレーム、汚れた壁、割れたガラス、という視覚的情報から想像されるのは街中で悪戯や犯罪によって割られた窓ガラスだろう。このシリーズは、割られたガラスを放置しておくよりも、それを仮にでも補修しておくことで治安の改善に役立つという犯罪学者ジョージ・ケリングによる有名な「割れ窓理論」を元にしているという。ガンダー自身が果たしてそうした社会学、犯罪心理学的なことをどこまで踏み込んで制作の基礎としているのかまでは明らかにされていないが、しかし、ガラスが割れるというある種の暴力性の象徴に対して、修繕する行為というのは人道的な精神を思い出させることは本作を前にしても確かであるように思われる。また、作品を見てもそれを見つけることはできないが、このシリーズにはフォーチュン・クッキーの紙片(中華圏で供される焼き菓子の中に入れられたおみくじ)が内部に封入されているという。暴力と道徳、そして目には見えない運、それらが関係することで何が生みだされているだろうか?ガンダーの作品に通底する、深読みを誘う独特の話法はここでも遺憾無く発揮されているといえよう。
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