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上海での隔離 / Quarantine in Shanghai
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Year: 2021
Medium: water-soluble wax pastel, ink, thread on paper
Dimensions: 20 x 25 cm (7 7/8 x 9 7/8 in.)
Acquired from KENJI TAKI GALLERY, 2022
本作は塩田が2021年に展覧会のために訪れた上海で長期間の隔離を経験した際に滞在先で描かれた一連のドローイング群の内の一点。同シリーズでは、ホテルの室内らしきベッドや、自らの手足、椅子、窓、群衆、家などのいくつかのモチーフが連続して描かれている。本作は10名ほどの人々が身を寄せ合っている。厳しい措置の最中に人が集うとすれば検査か除染作業の様子だろうか。パンデミックによって人と人の距離が遠ざけられることとなった事実に直面した塩田がそれに対して何も感じないことなどなかっただろう。塩田の作品には赤く染め上げた糸が多用されるが、体内の血管組織を直接的に模しているのと同時に、血縁や運命を繋ぐ比喩としての糸でもある。赤い糸の意味は本作においても引き継がれている。幾人かの胸と胸の間を結ぶように伸びる数条の黒い糸や赤いインクによる網状の描写は、いずれも中心に描かれたただ一人赤い輪郭を伴った人物から広がっている。互いに触れ合うことはできなくとも、心を繋げることはできるという希望を表象しているだろう。