-
Light Tree
-
Year: 2015
Medium: oil, gold leaf on canvas
Dimensions: 137 x 178 cm (54 x 70 in.)
Acquired from Echigo-Tsumari Art Field, 2022
緑深い森の中に一本の金色の大樹が立っている。泉のほとりだろうか、青い水面に揺れる景色が下方に見える。こんな場所がどこかにあったようなと、ありもしない記憶を辿りたくなるような感傷的な景色だ。木の肌一面には細かい線で木目がびっしりと描かれているが、金箔が光を受ける角度に応じてそこに重ねられた線は相対的にハイライトのようにも影のようにも見える。大岩の作品において光と影の表現は一貫して重要な要素だ。また、大岩は人の目よりも高い位置に視点を置いて絵を描く。特に大作では鳥瞰図と評されることが多いように、はるか天空から世界を見渡すような広大な視野が特徴としてある。本作も梢から見下ろすようなやや高い視点から描かれている。人間の身体性を凌駕した高い視点というものは絵画においては様々な意味を持つが、本作においては真に描くべき対象からある程度距離を保った視点を明示することによって、その視線の向けられた先は人ならざるものの領域であることが示唆されているだろう。蛍火のような光の粒子が中空を舞う様子は度々大岩の作品に描かれるが、本作でも光る大樹の聖性を引き立てるようにたくさんの光が漂っている。幻想的な本作であるが、大岩自身が眼差しているものはこの景色のすぐ間近に迫っているであろう我々人間社会の諸問題や現実的な世界そのものだろう。大岩の作品が物語性と修飾されることが多い理由は、人ならざる高い視点と光の非現実的な表現がありふれた景色の中に送り込まれているためだ。その視座を借りることで私たちは大岩の捉えた現実を非現実的な物語として認識しているに過ぎない。本作は「大地の芸術祭2022」のプログラムとして磯辺行久記念越後妻有清津倉庫美術館(新潟)で開催された展覧会「大地のコレクション展2022」において展示された。