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April 5. 2011
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Year: 2011
Medium: oil, enamel and latex on canvas
Dimensions: 150 x 114.3 cm / 59 x 45 in.
Acquired from Christie’s, 2022
サリヴァンの作品は、通常のペインティングとは逆の視点で画面というものを捉える必要がある。一般的に絵画とは、構造的にはキャンバスや木製のパネルなどの支持体をゼロ地点として画材のレイヤーを上重ねしていくようにできている。ジェッソなどの下地を塗り、木炭や薄い絵具で下絵を付け、描画を重ねていく。その手順が多ければ多いほど画面はより重厚になり、情報量を増していく。インパストと呼ばれるような画面に対する物質的なアプローチもまた、その観点においては重層的なレイヤーの変奏である。現在ではレジン・ペインティングと呼ばれるサリヴァンの代表的な作品は、大きな平滑板に描画を重ねていき、被膜のようになった絵画を剥がして裏返すことで完成する。よって、仕上がった作品の表層は、制作プロセスのなかで最も早いレイヤーになる。一般的な絵画ではそれは画面の最も奥に隠されているものである。本作も同様のプロセスによって描かれているのが画面を見るとよくわかる。本来描写されたものは多少の凹凸をもって画面に重なっているという実感がある。しかし、本作のたとえば黒い飛沫のような描写はまるで転写か印刷のように滑らかに背景の赤と同化している。私たちが今目にしているのは、制作の過程においては裏側であったもののはずである。そして、生乾きであったはずのこの被膜としての絵画は、重力にさらされることでずり落ち、裂け、その結果として無数の襞を形成している。長い歴史の中で絵画を制度的に規定していた支持体、表面、フレームといった概念を逸脱した新たな絵画が提示されている。