Year: 2021
Medium: Laminated giclée print in colors, flush-mounted to aluminum with metal strainer on the reverse (as issued) contained in the original foam-lined cardboard packing box
Dimensions: 120 x 95.9 cm (47 1/4 x 37 3/4 in.)
Edition: No.546 of 1005
Acquired from PHILLIPS, 2022
1980年代の終わり、アート・マーケットへの挑発的な世代として立て続けに取り上げられたYBAs(Young British Artists)の中で、最もラディカルで戦略的な作家と評されてきた。現在に至るまでその姿勢を崩すことなく、衝撃的な作品を発表する度に世界中で話題をさらう。本作は国立新美術館(東京)での個展も実現された、ハーストにとって非常に珍しい「直筆」のキャンバス作品をもとに制作されたプリント作品である。見ての通りの桜の絵だが、ハーストがこれまで避けてきた作家自身の手仕事としての絵画に対して、愚直なやり方で向き合い直した。親しかった祖母への懐古を心理的出発点としていると作家が公言する通り、ハーストにしてはややエモーショナルな切り口だと言える。点描のように乗せられた絵の具の痕跡が、飛沫のように(実際に遠くから絵の具を投げ飛ばしながら描いた)舞い散る様子が、青空に鮮烈に浮かび上がる。黒々とした枝振りと荒いディフォルメがどこかゴッホの『梅の花 (広重)』とも重なり、示唆的である。