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untitled
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Year: 2018
Medium: oil on canvas
Dimensions: 227.3 x 162 cm (89 1/2 x 63 3/4 in.)
Acquired from ANOMALY, 2022
小西の初期作品からの特徴である家族の肖像を引き継ぐ群像。四方へ伸びる人物の腕が激しい運動性を感じさせる一方で、上部の深い青から足元の明るい青へと至る緩やかな変化を伴った背景色が絵画全体に静寂と奥行きを作り出している。作品の中央に堂々と描かれた人物は、棒のように直線的に描かれた腕や足が肉体というよりは骨格のように見える。明るい肌色で表現されているその棒状の体の隙間を青や赤、オレンジなどの複雑な色彩が埋めていることは妙に生々しい。 頭部は腕や足ほどに単純化されてはおらず、曲線的な線描が入り組む形で眼窩や鼻筋や口をそれらしく表現しているが、プロポーションを逸脱して異様に見える。 しかし、絵の元になった家族写真では、そこに写された人物はそれぞれ衣服を着用し、おそらくは和やかな表情をこちらに向けていたはずで、その姿や感情に似せて描くという表現は放棄されている。人が個別の人であると認識されるためには、個々の特徴を描き分ける必要があるが、小西はその個性を形式的な描写によって均質化してしまう。それによって「個」が喪失する代わりに「群」というまとまりが強められている。となれば、本作をはじめとする小西の群像が描き出す人間とは、他者と切り離された自我という人間像ではなく、相互の関係性の元に形成される社会的人間像であるのだと解釈される。家族というものは最も小さな社会である。自我でもなく、他者でもないニュートラルな人間の表象として、家族という群像を用いているのである。ゆえに小西の作品において「個」は極力覆い隠されている。