生き残る / Survivor
Year: 2019
Medium: oil on canvas, digital print on vinyl sheet
Dimensions: canvas: 292 x 388 cm (115 x 152 3/4 in.) vinyl sheet: 1100 x 295 cm (433 x 116 1/8 in.), 2 sheets
Acquired from ANOMALY, 2022
「あいちトリエンナーレ2019」の名古屋市美術館会場において発表された作品。トリエンナーレでは映像作品等と合わせたインスタレーションとして展示された。今津のこれまでの作品と同様に、モチーフは様々なメディアから引用したイメージを加工した上で絵画として描き直されている。今津作品の特徴ともなっているグリッチやバグの表現も見られる。しかし、本作を鑑賞するにあたっては、技法や手法の観点とは別の視点を持つ必要がある。
2018年からインドネシア・バンドゥンに制作の拠点を移した今津だが、本作ではインドネシアの野生動物や自然環境に対して人間の介入が引き起こしている様々な問題をテーマとして取り扱っている。現在でもインドネシアの国土の約半分は熱帯雨林であり、世界でも有数の生物多様性を誇る。しかし、経済的発展の著しいこの国では、紙・木材資源を得るための大規模な伐採や鉱業・農地転用による森林開発が進み、それに伴う希少な動植物の危機的な減少が懸念されている。今津は、人が豊かになることと引き換えに失われていくものへと眼を向けている。大型のキャンバスにはコモドドラゴン、ヒクイドリ、オランウータンなどが描かれ、それに猟銃を向ける人物や手榴弾の描写も見られる。投網を広げたような網目模様によって、様々な事物が絡め取られていく。ヤシの木や実、そこに滴るように描かれた液状のものはパームオイルの比喩だろうか。天井から吊り下げられる大きなバナー状のシートには、採掘場のような荒れた土地、爆煙、記号的に描かれた人間も交えた様々な動物たちのシルエットが混在する。作品に描かれた「alive」の語を誰を主語として捉えるかによって、それは一層シリアスな意味をもって見えてくる。業と欲が織りなす人間的な環世界の表象である。
撮影:金渡潤(Kim Doyoon)
写真提供:全南道立美術館
© UESHIMA MUSEUM COLLECTION
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